切手のないラブレター コラム

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BBAになっても女は「あの子」

夕方横浜の大黒埠頭に車を走らせた

 

むかし働いていた倉庫がなんとなーく見たくて、また海も見たくてね

 

だいぶむかしに働いていたんだけど、ここでは仕事よりも燃えるものがあった

 

恋。強引恋。強引婚。勝手な恋。なすりつけた恋。

 

ようするに片想い

 

当時俺は、

 

「禁断の恋」

 

をしていた

 

まあ犯罪ではないが、年がこうちょっと離れてるという。学生との恋だった。

 

しかし、ここで働いていたときに出会った、ここの事務のばばあに恋した。本命よりも恋した。

 

ばばあは二歳年上で、

 

「禁断の恋」

 

をしている傍からみたら、

 

ロリコン

 

なはずの俺が、ばばあに恋した。じじいがばばあに恋したという、いわば正常な恋である。

 

あれから時が経ち、「禁断の恋」も「ばばあ」との恋も忘れていた。離れ離れになった。

 

今日、倉庫の建物を見たとき(人はいい思い出より嫌な思い出が残るというのがよくわかった)不愉快になって、一瞬見ただけで通りすぎようとした。

 

が、、、、

 

「あの子だ!!!!」

 

あの子がこの寒さの中、スカートで倉庫内にいるではないか!

 

あの子はマスク姿で、トラックの運転手に伝票かなにか渡しているようだった。

 

「あの子だ・・・」

 

ばばあ、ばばあと思っていたのに、いざ予期していないばばあを見たら、「あの子」だと思った。

 

泣けてきたね。一瞬素通りしただけなのに、こんな乙な贈呈のために俺を大黒埠頭まで呼んでくれた神様に。

 

以前俺は、

 

「あの子、その子、この子、どの子」

 

というのは〇〇子という名前から来たのだという自説をコラムにしたことがある。

 

決して職場の上司が言う、

 

「うちの〇〇子」

 

といったような差別的な言い方とちがうのだ、とね。

 

なんというか、あの子っていったら、

 

「守りたい」

 

という気持ちのある優しい心になれる。

 

Uターンして家に向かった。車から流してる音楽は、

 

サンフランシスコ・ベイ・ブルース

 

だった。荒れた心の男には女が必要だ。久々に泣いたね。音楽も手伝って。

 

本命がいながら、一人の女性を「ばばあ」呼ばわりしていた俺には何も残るまいと思った。

 

それみたことか!

 

もう二年も恋人もいない。バチが当たったのだ。

 

しかし、あの子の働いている姿を見て、音楽と共に流した涙は、決して忘れまいと誓った。

 

何歳になっても「あの子」は「あの子」なのだ。