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切手のないラブレター コラム

ニヤニヤ喜びます プンプン怒ります メソメソ哀しみます ワイワイ楽しみます  

デュラララチャット「荒らしの本物の母が来た!?」

空腹で目が覚めた
時計を見ると夜の11時
昼飯食って寝たのだから10時間は寝たことになる。

 

一週間のお休みをもらっても特にやることはない。こんなに不規則でいいのかよ、と自分でも思う。
近くのコンビニに行きチューハイ500ml四本とから揚げと焼き鳥を買う。
もうこの時間になるとほとんど人は歩いていない。

 

俺のワンルームマンションは港町にある。だから夜は海風で死ぬほど寒い。部屋に戻り、PCの電源をつける。PCが立ち上がるまで最近やけに時間がかかる。やはりウイルスソフトに入らずに、エロ動画みてるとヤバいんだなあと思うがまあいいかって感じ。

 

レモンのチューハイを開けて飲む。
朝めし(夜11時半)から酒を飲めるなんてなんと幸せなことか。

 

から揚げを一つ食べてタバコに火をつけると、やっとPCが立ち上がった。まずヤフーニュースを開いた。テレビなんかみなくても生きていけるけど、ニュースさえ見ない世捨て人にはなりたくねえからな。

 

ニュースを縦から下に向かって追っていく。富士山世界遺産登録の話しばっか(注1)。またこのニュースかよと舌打ちする。まあでもめでたい話しではある。NEWS東西南北、毎日殺人事件じゃやってられねえしな。

 

 

ヤフーを閉じて、もなちゃととデュラララチャットを開く。酒を飲みながら深夜からチャットかよ。ニートって素晴らしいな。一週間の休みじゃ足りないと思い始めたがまあよしとする。

 

今日はもなちゃとは人があまりいないので、デュラチャにすることにした。昨日は真剣に音楽について男と朝まで語ったせいか、今日はチャラいのがいいな、チャラいの。

 

いくつか部屋に入ったが特に気分も乗らず。人数が多いからといって盛り上がってるとは限らないのがチャットの基本だ。
気がつくとチューハイは二本目に突入。PCと酒とタバコとチャット。なんと現代の夜は素晴らしいことだろう。たとえ仮面であっても夜中に孤独の涙を流さずに微笑みをたたえることが出来る。再び部屋を探す。すると、

 

 

<しもねた来るな>

 

 

という部屋を見つけた。人数は七人いる。なんだこの部屋は。しもねたは来るなといいながらも、部屋には(しもねた)という名前の人間がいるではないか。よしこの部屋にしよう。さっそく入ってみた。

 

デュラララチャチトの中でも最も地味で変哲もない青いアイコンの、(しもねた)という男がすごい勢いでまさにシモネタを連発している。

 

つーか部屋名が

<しもねた来るな>

ならしもねたを呼んでるようなもんだろうと小さく笑った。
俺が部屋に入ったことさえ気づかれないほどに、しもねたは、叫ぶがごとくおらぶがごとくシモネタを連発している。

「う〇こ食うか?」

これを一人ひとりに言いまわって歩いてる。ページがあっという間に下がっていく。
しかし恐ろしい速度だ。同じ言葉の連打防止を管理人は考えろと思った(注2)
たまに他の人間が、

「しもねた出て行け」

というのがまじるくらいで、(しもねた)はう〇こだけでは収まりがきかなくなったのか、ついに数名の10代と思われる少女達にとって、最もイヤな女性器のスラングを連呼するようになった。そしてページが埋まった。

 

しかしどんなになっても部屋主は(しもねた)を切ることはなかった。
そしてなんというか哀愁漂う荒らしであり、どこか部屋全体が活気に満ちた感じさえする。

 

なるほど。この(しもねた)という男は人気者なのかと合点した。荒らしにも、いや荒らしほど「人気者」になるには知的センスが必要になってくる。

従ってシモネタ系荒らしが一番敬遠されるのだが、この(しもねた)という男のシモネタには猥褻感が全くない。

 

断言するが女子達はかなり楽しくこの(しもねた)をウェルカムしているようだ。
俺は怒るどころか、もっと楽しませようと考えた。ハンドルネームを変えに一度退室した。


ハンドルネームを変えて再び登場した。
相変わらず(しもねた)はフィバーしていたが、俺の登場によって発言が止まった。画面には、

 

しもねたの母さんが入室しました

 

と出た。

 

この瞬間さっきから(しもねた)に占領されつくした部屋が、一転彼らの発言で埋まることとなった。

 

「www受けるwww」
「おい!しもねた!お母さんが来たぞwww」
「お母さーん 息子さんはさっきからシモネタばっかりいってますよーw」
「お母さんしもねたさんをなんとかしてくださいw」
「おい!しもねた!お母さんの前でも言って見ろよw」

 

 

赤いアイコンに変更した(注3)俺は酒の酔いと、ギャラリーの想像以上の反応に完全に酔っていた。

 

「こら!あんた こんな時間になにやってるの!  お母さん恥ずかしくて仕方がありません。もっとしっかりした息子だと思っていたのに」

 

俺が発言したとたん他の男女がドカンドカン受けている。実際(しもねた)は五分くらいは沈黙していたであろう。

しかし、(しもねた)は突っ張った。何事もなかったように再び高速連打で喚きはじめた。
一瞬にして(しもねた)の発言だけがページを埋め尽くす。しかし絶妙な間で俺が、

 

「いいから勉強して早く寝なさい」

 

「何度お風呂入れと言ったらわかるの!」

 

「お父さんに報告します」

 

などと打つと再び(しもねた)は沈黙して、他の男女が受けるといった現象が何度もおきた。

 

「きちがいには勝てねぇ」

 

(しもねた)が初めてシモネタでないセリフを吐いたので、俺はPCの画面に酒を噴き出しそうになった。(しもねた)は言った。

 

「俺も荒らしやって長いがこんな手は思いつかなかった」

 

荒らしの母を称して荒らし退治(この時は共に楽しんだのだが、本格的な荒らしにも効果があった)をしたのは俺が知る限り他にはいない。

 


・・・・・・中学の時ある男女のグループが、夏休みに河原で花火をやろうと計画した。それを知ったあぶれた男達だけのグループが、男女グループの花火大会を攻撃しようと企てたのだった。

 

夕暮れ河原で男女達は花火を始めたのだが、なにか盛り上がりにかけていたという。その時である。あぶれた男達だけのグループが、

 

「よしいけー」

 

といって花火をバンバン飛ばし始めた。最初女子を抱えた男達は怒りに震えていたが、どうも危険性のない攻撃をしていることがわかった。それは女子達にも伝わった。

 

「あいつらやつけようよ」

 

女子達の号令により、<危険でない花火戦争>が行われたという。ごっそり買ったはずの花火が瞬く間になくなり、両者買出しに走るくらい盛り上がったという。
そしてそろそろという時間になったころに、

 

「退散!」

 

といって帰っていったそうな。その後残された男女のグループは線香花火をやりながら、

 

「今日は楽しかったねー」

 

と言って男女の花火大会は無事終了したという。その時の主催者曰く

 

「盛り上がらなかったときどうしようと思った。アイツらが来た時、一瞬ムカッとしたが、アイツらがいなかったら本当につまらない夜だったろう」

 

ちなみに攻撃した男達は、

 

「最後の線香花火だけは邪魔するのやめよう」

 

と言っていたそうな。

 

 

・・・チャットの人気者の荒らしというのはこの話しと同じである。荒らしをやるなら、楽しませるくらいの心がなきゃやるな!と言いたくなる。


冒頭でも話したが、荒らしはまず知的でなきゃダメだ。すなわち馬鹿ではできない。
もう一つ知的で「悪意のない荒らし」の発言には読後感がサラっとしていて、不快感がない。今後(しもねた)や(しもねたの母)のようなコンビは現れないだろうと思う。荒らしとして「こいつセンスあるな」というのがたまにいるが、減ってきているのは確かだ。将来的には本当に<ただの荒らし>だけになるような気がする(注4)

 

俺は荒らしになれ、と勧めているわけではない。荒らしを好んでるやつらに、そこんとこを考えろといいたいのだ。

 


「俺も荒らしやって長いがこんな手は思いつかなかった」

 

(しもねた)はそういい残して退室していった。シモネタを連発したことは除いて、彼は十分に楽しい人間だった。だからこそ

<しもねた来るな>

なんて部屋を開く人間がいたのだし、俺も便乗して<荒らしを荒らす>という行為に走ったのだった。

(しもねた)が退室した後にある一人が言った。

 

「まじな話し、本物の母親が来たらイヤだよなあ」

 

その言葉で俺は再びPCの画面に酒を噴き出しそうになった。

 

 

(注1) 2013年 富士山が世界登録に認定された。この記事はその頃の話し。
(注2) 当時連打することは容易であった。
(注3) 今と違って女っぽいアイコンを使うのは本物のネカマだけだった。
(注4) 2017年現在 荒らしの質は最低である。ただ同じ文字を連打するだけで本当に邪魔なだけだ。無視機能がなければユーザーがいなくなるだろう、というほどのレベルまで落ちている。チャットの低年齢化を指摘する者もいるが、残念ながら的を得ていない。18歳以上の青年期の低脳ぶりが目立って仕方ないのは俺だけであろうか?(むかしはよかった)という懐古主義者ではないのだが、頭のいい荒らしはレアな存在となった。
しかし、現在も知的な荒らしはやはり人気を博している。